Good job プロジェクト
こどももおとなも“働くワクワク”に出会った一日~第14回グリーンフェスを開催 Vol.2
今回のグリーンフェスも、多くの企業・団体の皆さまのご支援のおかげで開催することができました。
地域のこどもたちや若者が、多様なおとなと出会い、働くことや地域に関わることの楽しさにふれる場を応援していただいたことに、心より感謝申し上げます。

会場には、飲食、物販、ワークショップなど、さまざまな出店ブースが並びました。
それぞれのブースには、地域で活動する方々のおもいや工夫が込められています。
おいしいものを届ける人、手づくりの楽しさを伝える人、子どもたちの挑戦を見守る人、来場者との会話を楽しむ人。そうした一つひとつの関わりが重なり、グリーンフェス全体のにぎわいをつくっていました。

ブースの皆さんを、写真とともにご紹介します。


















初期の頃から参画いただいている移動ふれあい動物園は、今年も多くの子どもたちに大人気でした。
子どもたちは、動物たちの近くに座ったり、そっと手を伸ばしたりしながら、いのちの温かさにふれていました。普段の生活ではなかなか出会えない動物たちとの時間は、子どもたちにとって特別な体験になったのではないかと思います。

あおぞら図書館のブースには、小さなお子さんが、お母さんやおばあちゃんと一緒に立ち寄ってくれる姿が多く見られました。
本にふれる時間、ぬり絵を楽しむ時間、シールを交換したり見せ合ったりする時間。そこには、急がず、比べず、それぞれのペースで過ごせるゆるやかな空気が流れていました。


シール交換は今回初めてのこころみでしたが、子どもたちが自分の持っているシールを見せ合いながら、自然と会話を交わしていました。
「わくワークステージ」では、オープニングを飾る彩誠太鼓さんの力強い演奏から始まり、レスポワールバレエの皆さんによる華やかな発表、シーホース工房、一期JAMによる民族楽器の演奏と続きました。そしてエンディングは、ダンスチーム K.A.Dによるエネルギッシュなパフォーマンス。




多彩な出演者の皆さまが会場を盛り上げてくださり、会場全体に一体感とにぎわいが生まれる時間となりました。
グリーンフェスは、一日限りのイベントでありながら、その背景には多く人たちの準備、協力、対話のプロセスがあります。
それぞれのが重なり合うことで、会場には「働くこと」を地域の中でひらいていくような場が生まれました。子どもたちにとっての仕事体験は、大人にとってもまた、「働くとは何か」「地域でともに生きるとは何か」を考えるきっかけになったのではないかと思います。
来年は15回目という節目の開催となります。これからも日本ES開発協会では、地域の中で、子どもたちや若者が多様な人と出会い、自分の中にあるワクワクや可能性に気づいていける場づくりに取り組んでいきます。
ご来場いただいた皆さま、ご出店・ご協力いただいた皆さま、運営を支えてくださった皆さま、本当にありがとうございました。
こどももおとなも“働くワクワク”に出会った一日~第14回グリーンフェスを開催 Vol.1
2026年3月28日、春日部市レジデンシャルパークSHOWA(庄和総合公園)にて「グリーンフェス」を開催しました。

当日は天候にも恵まれ、春らしい空のもと、地域とのつながり豊かな飲食ブース・ワークショップブース・ステージ、移動動物園、あおぞら図書館など、さまざまな「はたらく」が集まりました。会場を訪れた多くの子どもたちやご家族が、食べる、つくる、見る、ふれる、などたくさんの体験と出会いが重なり合う一日となりました。
“働くワクワクの根っこ”を育む場として
グリーンフェスで大切にしているのは、地域で働く人たちの姿にふれたり、小さなお仕事を体験したり、誰かの役に立つ経験をしたりする中で、「働くっておもしろいかもしれない」「自分はこういうことができるんだ」といった感覚が芽生えていくことです。
その小さな芽を、私たちは“働くワクワクの根っこ”と捉えています。
こどもたちのお仕事体験「はたラボ」では、のべ100名の子どもたちが、会場内の協力ブースでさまざまなお仕事を体験し、お店の人のお手伝いをしたり、来場者に声をかけたり、ブースの活動に関わったりしながら、それぞれのペースで“働く”にふれていきました。
〈はたラボ協力ブース〉
-埼玉県立庄和高校(金谷ホテルベーカリ-のパン屋さん)
-浅草 田心カフェ(カフェ店員)
-春日部 イシハラヤ(おかき屋さん)
-春日部 おづつみ縁(お茶屋さん)
-春日部 お菓子の家 スワン(お菓子屋さん)
-横浜 石井造園(コーヒー屋さん)
-移動ふれあい動物園(飼育係)


お仕事を終えた子どもたちは、コミュニティ通貨「ワーク」を受け取ります。「ワーク」は、誰かの役に立ったこと、場に関わったこと、地域の一員として参加したことを表す“つながりの証”です。
※ワークは一枚100円としてグリーンフェス会場内でのお買い物に使用することができ、その原資には「日光街道太陽のもとのてらこや」の皆さんの参加費の一部を充てさせていただいています。

子どもたちが自分の力を使って場に関わり、「ありがとう」とともに受け取る経験は、働くことの原点にふれる時間でもありました。
また、協力ブースの皆さまには、子どもたちをあたたかく迎え入れ、一緒に体験の場をつくっていただきました。
大人が見守りながら、子どもたちが少し背伸びをして挑戦する。その姿が、会場のあちこちで見られました。
この「はたらく体験ラボ」をはじめとグリーンフェスの企画・運営に関して、毎年、埼玉県立庄和高校の生徒の皆さんに運営にご協力をいただいています。


今回も、子どもたちへの声かけ、はたラボのサポート、ブース運営の補助、会場内での案内など、さまざまな場面で力を発揮してくれました。
若い世代のメンバーが互いに工夫し楽しみながら動く姿には、頼もしさがあります。昨年関わった生徒が、今年は後輩の後ろ側でサポートに回る。そうした循環も、大切な価値のひとつです。
子どもたちにとっては、少し年上のお兄さん・お姉さんと関わる機会に。高校生にとっては、地域の中で自分の役割を持ち、誰かを支える経験に。世代を超えて学び合う場にもなっています。
また、グリーンフェスは、子どもたちが“働く”にふれる場であると同時に、関わる大人たちにとっても、小さな挑戦や喜びが生まれる場でもあります。


あおぞら図書館ブースでのハンドリラクゼーションや、利用者さんが手づくりした作品の販売。
各ブースの中でも、「今回初めてやってみようと思って持ってきたんです」「友人と作った手仕事品を一緒に並べています」などなど、さまざまな「新たな一歩」が並んでいました。
自分のつくったものが誰かの手に渡ること。それが誰かに届くうれしさ。それも、働くことの根っこにあるわくわくを感じさせてくれるものです。
Wao!考えるな、感じろ―日光街道「太陽のもとのてらこや」ふりかえりワークショップからみえてきたもの
今回のJES新年会では、第一部として、でじでじさん(藤村義樹さん)をファシリテーターにお迎えし、「日光街道ふりかえりワークショップ」を開催しました。
実は、17回続いてきた日光街道イベントの中で、このような形でじっくりと“ふりかえり”を行うのは初めてのこころみでした。

日光街道イベントは、日本橋から日光東照宮まで約147kmの道のりを、5日間に分けて歩いていく活動です。徒歩行軍コースに加え、地域や文化に触れながら巡る「まちあるきコース」もあり、毎年さまざまな人が関わりながら続いてきました。
しかし、この活動について「なぜ参加しているのか」「なぜ歩くのか」と問われると、実はうまく言葉にできない場面も少なくありません。
「なんとなく惹かれて参加した」
「歩くと気持ちいい」
「うまく説明できないけれど、また行きたくなる」
そんな感覚を持っている人が多い一方で、その“何か”を深く言葉にする機会は、これまであまりありませんでした。

今回のでじでじさんのワークショップは、まさにその「言葉になる前の感覚」を、色や対話を通して掘り起こしてみよう、というこころみでした。
冒頭、でじでじさんは、アーノルド・ミンデルのプロセスワークから「3つの現実」という考え方を紹介してくれました。

一つは、数字や結果、ルールなど、誰もが確認できる“合意的現実”。
もう一つは、感情や気持ちなど、見えにくいけれど確かに存在する“ドリーミング”。
さらにその奥には、文化や空気感、場の雰囲気のような“エッセンス”がある、と。
私たちは普段、どうしても「結果」や「数字」の世界だけで物事を考えがちです。しかし日光街道には、それだけでは説明できないものが流れているのではないか。そんな問いかけから、ワークショップはスタートしました。
JES理事長の金野からも、あらためて「日光街道とは何なのか」をお話させていただきました。
日光街道には、「147kmを5日間で歩く」という明確な行程があります。集合時間も、ゴール時間も決まっている。特に徒歩行軍では、「この時間までにここへ着こう」という秩序や構造がしっかり存在しています。
一方で、その行程という枠組みの中では、毎回まったく違う出来事が生まれます。
足が痛くなった仲間に声をかけること。
「あと少しだから頑張ろう」と励まし合うこと。
時間が限られる中でも、「ここだけは立ち寄りたい」と皆で景色を味わうこと。
歩きながら、普段なら話さないようなことを自然と語り合うこと。

そうした機械的な側面と生成的な側面とのあいだにおいて、混ざり合いや重なり合いが起き、後から「ああ、こういうことだったのか」と身体で意味を感じていく。日光街道とは、そんな活動なのかもしれない―。この一年で感じていたことをお伝えさせていただきました。
ワークでは、まず参加者一人ひとりが「足跡」の紙に、自分の感覚を色で表現していきました。足跡は私たちの活動の象徴でもあります。

楽しかった気持ち。
不安だった気持ち。
混ざり合う感覚。
緑の景色。
疲労感。
美味しかったビール。
人とのつながり。
歩いた先に広がっていた世界。
でじでじさんは、「みんな正解です」と何度も伝えてくれました。

「もう嫌だと思った」も正解。
「楽しかった」も正解。
「疲れた」も正解。
その言葉があったからこそ、参加者それぞれが安心して、自分の感覚を表現できていたように思います。
その後、グループごとに対話を重ねながら、日光街道を表すキャッチフレーズも考えていきました。
「Wao!」「歩くとわかる」「混ざり合う」「大人の遠足」「考えるな、感じろ」。
そんな言葉が、多様な参加者、しかも日光街道イベントに参加した回数も密度も異なる人同士の中から自然と生まれてきたことも、とても印象的でした。

今回のワークショップでは、「日光街道とはこういうものだ」という一つの正解を決めたわけではありません。
むしろ、それぞれが感じていたこと、見ていた景色、抱えていた思いを持ち寄り、「違い」を知り、「混ざり合う」時間だったように思います。
歩くことでしか見えない景色がある。歩くことでしか生まれない対話がある。そして、歩くことで、自分の中にある感覚に気づいていく。
このワークショップを通して、日光街道という活動の中に流れていたものを、少しだけ皆で言葉で表出させることができたように感じています。
今年の11月の日光街道イベントではどのような物語りが生まれてくるか。
またそれぞれの“感じる”を持ち寄りながら、皆で日光街道を歩いていきたいと思います。
影山摩子弥先生の講義から考える「人的循環経営」の可能性
2026年2月に日本ES開発協会の新年会が開催され、顧問である影山摩子弥先生による講義が行われました。

今回は「これからの企業経営における、人と組織の関係性」というテーマのもとにお話いただきました。
まずはじめに、従来の組織のあり方について二つの典型を挙げました。
一つは、役割や権限が明確に定められたヒエラルキー型組織。もう一つは、価値観を強く共有した共同体型組織です。
一見すると異なる形に見えるこの二つの組織ですが、どちらも組織の構造や価値観が強く固定されており、「隙間」が生まれにくいという点が共通しているそうです。
しかし社会が豊かになり、人々の価値観や生き方が多様化していく現代では、こうした固定的な組織の形だけでは十分に機能しなくなっています。人はそれぞれ異なるニーズや関心を持ち、それを主体的に追求するようになっているからです。
こうした社会の変化の中では、企業もまた多様なニーズを捉え、情報を処理しながら柔軟に対応していく必要があります。そのためには、組織の内部だけで完結するのではなく、社員一人ひとりが社会と接点を持ち、外部から情報を取り入れていくことが重要になります。
影山先生は、この点を説明するために、システム論の「最小多様性」という考え方を紹介しました。

これは、組織が存続するためには、その組織を取り巻く環境と同じか、それ以上の多様性を内部に持つ必要があるという理論です。
つまり、社会が多様化している時代には、組織の中にもそれに応答できる多様性が必要になります。そのためには、社員が社会の中に出ていき、人や地域、さまざまな活動に触れることで、多様な情報や経験を持ち帰ることが重要になります。
影山先生から見た有限会社人事・労務(日本ES開発協会の母体組織)は、こうした考え方を踏まえ、以前から「自主的でありながら緩やかにつながる組織」というあり方を提起してきたことをお伝えいただきました。これは、ヒエラルキーでも共同体でもない、一人ひとりの主体性を尊重しながら関係性が広がっていく組織の姿です。

そして、この考え方をコミュニティ経営の視点を踏まえて提示したものが「人的循環経営」です。
人的循環経営とは、人材を単に管理する対象として捉えるのではなく、人の経験や関係性が組織の中で循環していく状態をつくる経営のあり方です。
社員が外に出て社会と触れ合い、人を知る体験を持ち帰る。その経験が組織の中で共有され、新しい視点や発想を生み出していく。そして、その活動は企業の中だけでなく、地域や社会にも新しい循環を生み出していきます。
このように、人が社会と関わりながら成長し、その経験が組織と社会の双方に良い影響をもたらしていく。そうした循環をつくることが、これからの企業経営において重要になるということでした。
また、この人的循環経営を企業の中で実践していくための方法として、有限会社人事・労務では「AIDAマップ」というツールを活用しています。

AIDAマップは、組織の中に流れているエネルギーや関係性の状態を可視化するための地図のようなものです。数値評価やKPIだけでは捉えきれない組織の状態を、対話を通じて言語化し、共有していきます。
AIDAマップを使った対話の場では、部署や役職を越えてメンバーが集まり、普段は言いづらかったことや、なんとなく感じていた違和感が言葉として表に現れてきます。
そこから、制度の改善だけでなく、組織の深層にある期待や願い、そして新しい可能性が見えてくることもあります。こうしたプロセスを通じて、人事制度などの制度設計もルールとしてだけではなく、人の感覚とつながった形で見直されていきます。
「組織のAIDAマップ」が照らす、会社の再定義と「あそびと余白」▼
今回の新年会では、影山先生の講義を通して、制度と文化の両方を見つめながら組織を育てていくことの重要性を改めて感じる機会となりました。
企業が持続的に成長していくためには、制度を整えながらも、人と人の関係性が育ち、学びが循環していく土壌をつくることが必要です。
今後も、人的循環経営の実践を支える取り組みとして、AIDAマップをはじめとする対話の場づくりを有限会社人事・労務コミュニティ全体で進めていきます。
人が育ち、関係が育ち、組織が育つ。
そのような循環を生み出す企業づくりを、これからも探究していきたいと思います。

「はたラボ」でのお仕事体験を通じたコミュニティ通貨「ワーク」のドネーションについて

「グリーンフェス」は、”地域のはたらく力の循環”を表現する場です。
会場内では、地域のこどもたちを対象に「はたらく体験」のブースを開催します(はたラボ)。
こどもたちが地域で営まれる「はたらく」を体験し、
その楽しさやうれしさ、あたたかさが、記憶の片隅に刻まれていく。
大きくなった時、その記憶が、将来の働き方を選択する場面やキャリアのあり方を考えていく場面で、「はたらくワクワク」の原体験として作用していく。
その作用が「踏み出す一歩」を支えてくれるはず。
私たちはそのように考えています。

今回この ワーク3枚 + 寄付 が付いた「ワンコインドネーション」で
はたラボを支えグリーンフェスに参画いただけるしくみを設けました。
🌳ワンコインドネーションに協力いただいた方のお名前は、
「グリーンフェスご案内ページ」に掲載させていただきます。
🌳「ワーク」は、当日グリーンフェス会場内でお買い物にお使いいただけます
(裏面に、ブースやこどもたちへの応援メッセージを記入のこと)。
寄付(200円分)は、こどもたちがお仕事体験後に受け取るワーク2枚分に充てさせていただきます。
🌟10口以上ご協力いただいた場合は、所属企業・ご自身の団体等のロゴを
”グリーンフェス会場内に設置するボード(もしくはゲート)”に掲示させていただきます。
【イベントレポート】ZEN 禅的マネジメント -いのちがよろこび新しい自分に還る道- ゲスト:小森谷浩志さん
2025年11月8日、秋の柔らかな日差しが降り注ぐなか、歴史ある日光街道を舞台に特別な時間が流れました。「日光街道 太陽のもとのてらこや」のオープニングセミナーとして開催された本イベント。ゲストに迎えたのは、経営思想家であり、禅と経営学を融合させた独自の探究を続ける小森谷浩志さんです。
参加者はセミナーの前に、実際に日光街道を1時間歩くというフィールドワークを行いました。

かつて徳川家康公が国の礎を築き、二宮尊徳が地域興しに奔走し、松尾芭蕉が「奥の細道」を辿ったこの道。偉人たちの足跡が残る土を自らの足で踏みしめ、身体を活性化させた状態で、小森谷さんの言葉に耳を傾けました。
▪️身体から始まる「自覚」の旅
「皆さん、1時間歩いてきて身体が温まっていますね。これからの時代を生きる上で、何より大切なのが『身体性』です」
小森谷さんは、ニッカウヰスキーでの営業経験や、延べ5万人以上との対話、そして30年来の瞑想と禅の研究に基づいた穏やかな語り口で始めました。
「禅的マネジメント」とは、誰かを操作する手法ではありません。それは、自分自身の「いのち」が喜びに満ちる生き方・働き方へと立ち還るための、自己探究のプロセスです。
小森谷さんは、禅の基本テキストである「十牛図(じゅうぎゅうず)」を現代風のイラストで示しながら、人の成長と変容を解き明かしていきました。

▪️十牛図が示す「本来の自分」への道
十牛図とは、逃げ出した牛(本来の自己)を牛飼い(自分)が探し、手なずけ、やがて牛も自分も忘れて境地に至るまでのプロセスを10枚の絵で描いたものです。
- 「尋牛(じんぎゅう)」: 何か大切なものを見失い、焦って探し始める段階。
- 「得牛(とくぎゅう)」: 本来の自己に触れるが、まだ自分の中でエネルギーが暴れており、コントロールに苦心する。
- 「騎牛帰家(きぎゅうきか)」: 牛と自分が一体となり、笛を吹きながらゆったりと家へ帰る。
- 「入纏垂手(にってんすいしゅ)」: 最後は、悟りの世界に留まるのではなく、再び賑やかな「町」へ戻り、他者を助け、次なる牛飼いをサポートする。
「このプロセスは、一生をかけた大きな旅であると同時に、1日の中でも、あるいは1時間の散歩の中でも、私たちは小さな十牛図を何度も回しているのです」
▪️「比較の植木鉢」から抜け出し、「内なる泉」へ
現代の私たちの働き方を苦しめているもの。その正体を、小森谷さんは「比較」というキーワードで紐解きました。

SNSで同期の活躍を見て焦る、年収や役職という「社会の物差し」で自分を測る。これは、外側からの水を求めて渇く「植木鉢」のような状態です。
「仏教で言う『自由』とは、自らに由(よ)る、という意味です。外側の物差しではなく、自分自身の内側に物差しを持つこと。そうすれば、私たちは外からの供給を待たずとも、自らコンコンと湧き上がる『泉』のように生きることができます」
ここで、小森谷さんは身体を使ったワークを提案しました。

単に立っているだけの状態と、足の裏から根っこが生え、地球の中心を掴んでいるようなイメージを持った状態。横から軽く押されたときの安定感は、驚くほど違いました。
「自分が自分と繋がっているだけで、これほどまでにパワフルになれる。これが『自覚』の力です。比較して心が揺れたときこそ、一度身体に戻り、自分と繋がり直すことが大切なのです」
▪️いのちを輝かせる「7つの原則」
小森谷さんは、長年のコンサルティング経験と東洋の智慧を凝縮し、個人が「本来性の開花」を遂げるための7つの視点を共有しました。
- 本来仏(すでに宿っている): 遠くに探しに行く必要はない。輝きはすでに自分の中にある。
- 固有である: 自分の経験や感覚は、唯一無二。代わりはいない。
- 絶対的である: 固有であるからこそ、本来、他者と比較することはできない。
- 等しい: 全員が「固有である」という一点において、平等に尊い。
- 自力である: 自分の人生を生きること、食べる、寝る、排泄する。これらは誰も代わってくれない。
- 他力・関係性: 自力ではあるが、人は他者という鏡(シャドウ)を通じてしか、自分を磨くことはできない。
- 即実行(思い立ったが吉日): 思い立ったということは、すでに「縁」が結ばれている。すぐに試してみること。
特に印象的だったのは「代わってもらえない」という話です。
「お腹が空いたから代わりに食べておいて、とは言えません。それと同じで、自分の人生をどう生きるか、何にいのちを燃やすかは、誰にも代わってもらえない神聖な仕事なのです」
▪️日光街道という「越境」の舞台で
本イベントの舞台である日光街道は、かつて多くの先人たちが「はたらく」を通じて国の未来を描いた道です。
「日光街道 太陽のもとのてらこや」は、この147キロを5日間かけて歩き、地域で活動するリーダーや実践者と触れ合う経験学習の場です。
小森谷さんは、この「歩く」という行為自体が、まさに禅的な修行そのものであると言います。
「歩くことは、身体と心、そして大地を繋ぐ。そこで交わされる対話は、頭だけの理屈を超えて、魂に響くものになります。この街道沿いで、多様な価値観に触れ、既存の枠組みを越えていく(越境する)経験こそが、新しい自分に還る道なのです」

▪️町に入って、手を垂れる
セミナーの最後、小森谷さんは参加者にこう問いかけました。
「悟りの山に籠もるのではなく、もう一度、日常という町に戻りましょう。そこで、今日得た気づきを馴染ませ、周りの人のために何ができるかを考える。それこそが、十牛図の最終段階であり、真のマネジメントです」
物理的な家(ハウス)があるかどうかではなく、心の中にいつでも還れる場所(ホーム)があること。
参加者たちは、温まった身体と、自分という「泉」への確信を胸に、再び街道へと踏み出しました。その背中は、セミナー前よりも少しだけ地に足がつき、軽やかになったように見えました。
日光街道という歴史の道の上で、私たちは今、自分たちの手で未来の「はたらくカタチ」を描き始めています。
歩く・はたらく・共に生きる-いのちがめぐるケアの社会へ-

2018年、野田聖二さんは『資本主義の崩壊が始まる』を出版し、成長や効率を追い求めてきた資本主義のシステムがいよいよ限界を迎えつつあることを鮮やかに予見しました。
あれから6年。コロナ禍を経て、社会も世界も、これまでの「豊かさ」や「働くこと」の意味を根底から問い直す時代にあります。
現在、福祉の現場に立ち、生活困窮者のキャリア支援を通して、「いのちを支える経済」のあり方を探究している野田さん。そこには、数字や効率では測れない、人と人とが支え合い、寄り添いながら生きる“ケアの関係”が息づいています。
そこで、「太陽のもとのてらこや」最終日でもあるこの特別講演では、「歩く・はたらく・共に生きる」をテーマに、資本主義のその先に見えてくる“いのちがめぐる社会”を皆さんと考えてみたいと思います。
数字では測れない人間の尊厳とつながりの価値を、いかに再び社会の真ん中に据え直すのか。
壊れていくその先に「再生」していくことはできるのか?「共に生きること」とは?
いのちと経済の関係をやさしくほどきながら、これからの“共に働き共に生きる”社会をおもい描く機会にできればと思います。
<セミナー概要>
日時:令和7年11月29日(土)15:15 ~ 17:00
※ハイブリッド開催(リアル参加/Zoom参加・アーカイブ)
会場:日光東照宮「客殿」 / オンライン(Zoom)
プログラム:
・ 開会あいさつ
・ 第一部 映画『サティシュの学校 みんな、特別なアーティスト』上映(約30分)
・ 第二部 トークセッション「いのちがめぐる ケアの社会へ」
・ シェアタイム・質疑応答
・ 総括・謝辞
・ 閉会あいさつ
🌳これまでのセミナーの様子
📚 地域を舞台に観えてくる これからの参加型社会とは
📚 「さとのば大学」に学ぶ 日本の未来を変えていく新しい学習コミュニティ
📚 株式会社eumo 代表取締役 新井和宏氏 「ありがとうを運ぶお金の話」
📚 「たくましく生きよ」雄勝中の挑戦から学ぶ
●受講料:
Zoom参加の方 = 一般3,000円/学生1,500円
リアル参加の方=一般5,500円/学生3,000円 *特別祈祷代含む
*リアル参加お申し込みの方は、「日光街道 太陽のもとのてらこや」最終日(11月29日(土))にご参加いただけます。
*本セミナーは、ドネーションチケットの形をとらせていただいております。皆さまの参加費の一部は、日光街道沿いの地域の子どもたちのはたらくワクワクを育むお仕事体験「はたラボ」の運営費および学生の活動参加費に充てさせていただきます。投げ銭として、上記受講料に加えてのご寄付もよろしければご検討ください。
<Good Job アクション!>
https://hataraku.jinji-es.com/goodjob/action.html
<ゲスト プロフィール>

野田聖二 さん
エコノミスト / キャリアコンサルタント
1982年、東北大学経済学部卒業後、埼玉銀行(現埼玉りそな銀行)入行。
1994年、投資顧問会社(あさひ投資顧問)に出向し、チーフエコノミストとして9年間
マクロ経済調査・予測を担当する。2004年より日興コーディアル証券フィナンシャルアドバイザー
を経て2007年に独立し、エコノミストとしてセミナー講師や執筆業等に従事する。景気循環学会会員。
近年は、福祉領域の現場でのキャリア支援にも従事。著書に『2018年 資本主義の崩壊が始まる』『複雑系で解く景気循環』(東洋経済新報社)、『「景気ウォッチャー投資法」入門』(日本実業出版社)がある。
◎本セミナーは、「日光街道 太陽のもとのてらこや」のプログラムの一環として開催するものです。
https://hataraku.jinji-es.com/nikkou.html
「未来の新しい”はたらく力”を増やす」というテーマのもと日光街道を舞台に開催する「日光街道 太陽のもとのてらこや」では、フィールドワークをまじえながら五日間に分けて日光街道147キロを歩き進みます(各日参加可)。プログラムを通して目指すのは、”境を越えてつながりから価値を生み出す”働くかたちを学ぶこと。日光街道沿いの各地域で暮らす、「越境するはたらき方の実践者」「つながりの基点として地域を動かすコミュニティリーダー」「次世代の子どもたちへバトンをつなぐ立役者」「未来思考のはたらき方を自ら実践するロールモデル」に触れながら、自分たちの未来像を描くヒントを見つけ出す経験学習の場です。
日光街道は、未来を見据え国の礎を築いた徳川家康公を始め、農家出身で農業に従事しつつも武士としてさまざまな地域興しを担った二宮尊徳氏、外国人というよそ者の視点から当時の日本の姿を客観的に世界に広めたイザベル・バード氏など、多くの偉人が足跡を残した道です。
俳人松尾芭蕉の紀行作品「奥の細道」にも多く取り上げられ、日本人から愛されてきたこの地域にある、日本の旧くから続く「はたらく」に、これからのはたらくカタチのヒントがあるのではないかと思います。
<お申込み>
ZEN 禅的マネジメント -いのちがよろこび新しい自分に還る道

日々の暮らしやキャリアの中で、私たちは時に「本来の自分」を見失ったり、環境や人間関係に窮屈さを感じたりすることがあります。そんな日常のもやもやと向き合う場面で取り入れたいのが、禅の知恵を現代的に活かす「禅的マネジメント」の視点です。
今回のオープニングセミナーでは、『ZEN 禅的マネジメント』著者の小森谷浩志さんをゲストにお迎えします。
小森谷さんは、禅の古典絵図「十牛図」を土台に人や組織の変容・成長を読み解き、誰もが持つ「自分らしさ」や「人や世界とつながる力」を大切にしながらいのちが喜びに満ちる生きかた・働きかたについて語っています。
-職場での人間関係をどう良くしていけばいいのか
-これからのキャリアをどう描いていくか
-今のような状態のままで将来どんな生き方をできるのだろうか
十牛図が示す自己探究の旅を、現代社会に生きる私たちの”道の歩みかた”に重ねながら、「既存の枠を手放し、新しい可能性を開くプロセス」「いのちがよろこびを取り戻す働き方」などについて皆さんと考えていきます。
本セミナーは、「日光街道 太陽のもとのてらこや」のオープニングイベントとして開催します。リアルでご参加いただく皆さんとは、その後、越谷宿までの道のりを歩いていきます。
禅的マネジメントの視点でまちの景色を眺めたり仲間と言葉を交わし合った時に生まれる気づきを大切に、実際にからだを動かしながら得られる身体性ある学びを日常に活かして、新しい自分に還っていく道を歩き出す機会にしていただければと思います。
<セミナー概要>
●日時:令和7年11月8日(土)10:30~12:15
*ハイブリッド開催(Zoom参加/リアル参加)
●プログラム
・ 開会あいさつ
・ 基調講演
・ トークセッション
・ 質疑応答
・ 謝辞・閉会あいさつ
●受講料:
Zoom参加の方 = 一般2,000円/学生1,000円
リアル参加の方=一般3,500円/学生1,500円
※リアル参加お申し込みの方は、「日光街道 太陽のもとのてらこや」初日(11月8日(土))にご参加いただけます。
※本セミナーは、ドネーションチケットの形をとらせていただいております。皆さまの参加費の一部は、Good Job アクションとして日光街道沿いの地域の子どもたちのはたらくワクワクを育むお仕事体験「はたラボ」の運営費および学生の活動参加費に充てさせていただきます。
投げ銭として、上記受講料に加えてのご寄付もよろしければご検討ください。
<Good Job アクション!>
https://hataraku.jinji-es.com/goodjob/action.html
<ゲスト プロフィール>

小森谷 浩志さん
株式会社ENSOU 代表
博士(経営学)
神奈川大学経営学部国際経営学科非常勤講師
一般社団法人インターナショナルZENカルチュラルセンター理事
株式会社ジェイフィール コンサルタント
1988年ニッカウヰスキー株式会社入社、営業にてトップの業績を残した後、アサヒビール株式会社のコンサルティング会社の設立に参画、コンサルタント育成体制を構築。約30年前に曹洞宗開祖道元の弟子懐奘が綴った『正法眼蔵随聞記』に邂逅。それ以来、瞑想とともに、日常の生活において禅の智慧を活用、研究を続けている。現在「いのちが喜ぶ経営」をテーマに活動。自覚の方法論として東洋の智慧、特に禅の基本テキスト「十牛図」に着目。内省と対話を鍵にマネジメント・コミュニティを中核とした組織開発、個の本来性の開花にアプローチするワークショップを、キヤノン、DeNA、富士通、富士フイルムなどの企業、NPO、教育機関、社会起業家に提供している。ここまで約50社のコンサルティング、3000回のワークショップで、延べ約50000人の方々と関わってきた。2010年から始めたファシリテーター養成講座は修了生が400名を越え、学習するコミュニティを継続中。カナダのモントリオールで行われたグローバルカンファレンスREFLECTIONS 2017では、世界20数カ国の参加者に「禅とマネジメント」を発信、話題を呼んだ。趣味は瞑想と気功。禅と経営学、一見遠い存在の二つの探究を道楽にしている。著作、論文に『協奏する組織』学文社、『週イチ30分の習慣でよみがえる職場』日経新聞出版社(共著)、『幸福学×経営学』内外出版社(共著)などがある。http://ensou.jp/
所属学会 日本経営診断学会、日本マネジメント学会、戦略研究学会他 。
◎本セミナーは、「日光街道 太陽のもとのてらこや」のプログラムの一環として開催するものです。
https://hataraku.jinji-es.com/nikkou.html
「未来の新しい”はたらく力”を増やす」というテーマのもと日光街道を舞台に開催する「日光街道 太陽のもとのてらこや」では、フィールドワークをまじえながら五日間に分けて日光街道147キロを歩き進みます(各日参加可)。プログラムを通して目指すのは、”境を越えてつながりから価値を生み出す”働くかたちを学ぶこと。日光街道沿いの各地域で暮らす、「越境するはたらき方の実践者」「つながりの基点として地域を動かすコミュニティリーダー」「次世代の子どもたちへバトンをつなぐ立役者」「未来思考のはたらき方を自ら実践するロールモデル」に触れながら、自分たちの未来像を描くヒントを見つけ出す経験学習の場です。
日光街道は、未来を見据え国の礎を築いた徳川家康公を始め、農家出身で農業に従事しつつも武士としてさまざまな地域興しを担った二宮尊徳氏、外国人というよそ者の視点から当時の日本の姿を客観的に世界に広めたイザベル・バード氏など、多くの偉人が足跡を残した道です。
俳人松尾芭蕉の紀行作品「奥の細道」にも多く取り上げられ、日本人から愛されてきたこの地域にある、日本の旧くから続く「はたらく」に、これからのはたらくカタチのヒントがあるのではないかと思います。
<お申込み>
日光街道「太陽のもとのてらこや」フィールドワーク(日本橋〜浅草)
こんにちは。JES学生メンバーの池田です。
先日、日本橋から浅草まで下見を行ないました。
8月ということもありもの凄く暑い中でのスタートとなりました。
11月の日光街道 「太陽のもとのてらこや」 集合場所となる”三越前駅周辺”では、地下の 「熈代勝覧」 、そして日本橋麒麟像など、昔の日本橋の街並みをイメージすることができました。
日本橋から浅草まではほぼ一直線の道のり。
曲がり角や休憩場所を確認しながら進みました。
十思公園 では、江戸時代の牢屋があった場所、という歴史に驚きました。
浅草方面に歩く中で観光客が多いことに改めて感じました。
初日11月8日は土曜日でもあり、ルート調整の必要性も感じています。
この日は 田心カフェ まで歩き、お昼ご飯(とろろ御膳)を食べました。
お食事をしながら、日頃の生活のことや自分の就活の話をしました。
今、就活を進める上で「人に喜ばれる仕事をしたい」という思いがあります。業界を絞りながら模索中ですが、他にもそう感じられる仕事はたくさんあると思うので、自分と見つめ合いながらゆっくり進めていきたいと思いました。
その後、田心カフェで働く機会も頂きました。
もともと、無添加の料理、有機栽培の野菜を軸にしているのは知っていましたが、店長の櫻井さんとお話をしていく中で、食材1つ1つへのこだわりがより一層伝わってきました。
飲食店(カフェ、居酒屋)を開きたいという思いは今も心の中では思っているので、良い経験になりました。
「協同労働」が描く 新たな社会の未来像」レポート
「太陽のもとのてらこや」ゴール地点である日光東照宮で、労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会専務理事・田嶋康利さんをゲストにお招きし、特別講演を開催しました。
「協同労働」という新しい働き方や組織形態を軸に、社会や地域の未来像について議論したその一部を抜粋してレポートします。

田嶋康利さんからはまず、日光東照宮という特別な場所での開催について、「この場所の歴史と自然の中で、日本の未来の働き方について考えられることに感謝します」とお話がありました。
協同労働は、「働く人たちが自ら出資し、経営に参加し、必要な仕事を創出する仕組み」で、「所有の概念を超えた組織運営により、共に価値を分かち合うこと」を目指しています。
田嶋さんが連合会専務理事を勤める「労働者協同組合(ワーカーズコープ)」は、働く人々が出資をして組合員となり、経営に参加しながら仕事に従事する新しい組織形態です。2020年12月4日に労働者協同組合法が成立し、法的な基盤を得ました。

この組織の特徴は、組合員が出資者であると同時に経営者であり労働者でもあるという点です。一般企業のように出資者、経営者、労働者が分離されているのではなく、全ての立場を組合員自身が担います。
組織の目的は、多様な就労機会の創出と、地域における必要な事業の実施を通じて、持続可能で活力ある地域社会の実現を目指すことです。
現在、ワーカーズコープは、全国で約1万4000人が就労し、事業規模は385億円に達しています。活動は北海道から九州沖縄まで広がっており、主な事業分野は多岐にわたります。
具体的には、地域福祉、子育て支援、障害者支援、若者の就労支援、コミュニティカフェの運営、農業、環境保全活動などを展開しています。
特徴的な取り組みとして、障害のある人もない人も共に働く場づくりや、地域の課題解決に向けた事業創出があります。また、所得保障制度を活用しながら、平均工賃を一般的な水準よりも高く設定するなど、働く人の生活の質の向上にも取り組んでいます。
基調講演の後は、トークセッションです。
パネリストとして、矢萩大輔さん(有限会社人事労務 代表取締役)、金野美香(一般社団法人日本ES開発協会 理事長)が登壇。田嶋さんと共にトークセッションを行いました。

矢萩さんは、協同労働の本質とその重要性について、日光街道を歩いた体験を踏まえて以下のように語ります。
「協同労働という言葉を聞いたことがある人はいると思うのですが、この法律の側面や協同労働の本質というところのお話を聞いたことがある人は、そんなに多くないのではないかと思います。今、自律分散型の組織やティール型組織という文脈の中で大切にしている”当事者意識”というところがあります。地域や暮らしの持続可能性に着目し、働く一人ひとりが当事者意識をもって経営に参画している、という点が、非常に興味深いと感じました。」
特に印象的だったのは、147kmの日光街道を実際に歩いた体験を通じた気づきの共有です。

例えば、杉並木の景観について、「自然を守るべき」という抽象的な議論ではなく、実際に歩いてみることでこれから見える現実の課題(歩行者の安全性など)に触れ、そこから生まれる当事者意識の重要性を説きました。
矢萩さんは、「”身体性”あるつながりの場と地域」であるコミュニティの本質について、効率や合理性だけでなく、実際に体験することで生まれる地域とのつながりの重要性を強調します。そして、地域の課題に対して、私たち自身もその課題の一部であるという認識を持つことの必要性を指摘しました。
金野は、基調講演で特に印象に残った点について、以下のように語ります。
「以前、ワーカーズコープのある事業所で、『就業規則を作るために丸一日事業運営を止めて、みんなで話し合って、働くルールをみんなで意思決定をして、次の日から仕事をスタートした』というエピソードを聞いたことがあります。当初は『それってありなんだ』とびっくりしましたが、それは自分たちでこの仕事を担っていて、この地域の中で仕事を動かしているという自覚が強く滲み出ていて、それが職場の中での対話の文化、話し合いの文化というところに大きく影響しているのだと感じています」
また、金野は2つ目の気づきとして、「ないものを作れる」という可能性をあげました。自身のキャリアコンサルタントとしての経験から、多くの人々が新しいことへのチャレンジを無意識に避けたり、与えられた枠の中でのみ行動しようとする傾向があると指摘。そのような中で、協同労働という制度は、自分が大切にしたい価値を形にし、周囲と協力して新しい仕事を創造できる可能性を提供していると述べました。特に、これから社会に出る若い世代に対して、このような選択肢があることを積極的に伝えていきたいと語りました。
トークセッションの後は、会場とオンラインの参加者からの質問に答えていきました。
例えば、「一般企業ではヒエラルキーによって意思決定がなされるが、ワーカーズコープではどのように合意形成を図るのか」という質問に対して、田嶋さんは以下のように回答しました。

「リーダーはみんなで選び、そのリーダーが日常的な仕事を見ながら提案を行います。ただし、提案の前段階として、しっかりとした議論と話し合いのプロセスを重視します。できる・できないの判断や、違う意見の提示、修正など、様々な意見を聞きながら合意形成を進めていきます。
時には強引な提案をすることもありますが、その場合も具体的な事実や可能性に基づいて提案を行います。基本的な姿勢として、組合員が『やりたい』『挑戦したい』という意識を持っているのであれば、それを支援する組織文化を大切にしています。
確かに合意形成には時間がかかり、これはデメリットとも言えます。しかし、みんなが合意できた時には、組織全体で一気に動き出すことができます。『1人の100歩よりも100人の1歩の方が大事』という言葉があるように、特定の個人の突出した行動よりも、全体が一歩前進することを重視しています。」
この回答に対して、矢萩さんは、単に話し合うだけでなく、参加者一人ひとりの「感情」にも目を向けることが重要だと補足。「この人はどういう感情でいるのか」という視点を持ちながら合意形成を進めていくことで、より良い結果が得られるとコメントしました。
本セミナーでは、「協同労働」という新しい働き方の可能性について、深い議論が交わされました。
日光東照宮客殿という歴史的な場所で、400年の時を超えて「未来の働くかたち」を考えたこの日。
パネリストたちが指摘したように、実際に地域を歩き、体験し、感じることで生まれる当事者意識や、感情に寄り添いながら深めていく「対話」は、複雑さ・多様さが際立ち時に分断が進むことも多い現代社会において、ますます重要になっていくのではないでしょうか。









