ES推進メンバーのあゆみ, インターン, はたらく力増量計画, 未来の新たな”はたらくカタチ”

自分を表す多様な切り口(接点)を持っていますか?

私は日頃、当協会母体の㈲人事・労務で組織づくりや人事・キャリアに関するコンサルティングをおこなっているのですが、その仕事の一つに、企業ではたらく個々の皆さんに向けたワークショップや研修の実施、というものがあります。
さまざまな目的で行うワークショップ・研修ですが、必ずその冒頭で行うミニワークがあります。
「バッハキュービック」というものです。

この手法は、かつて横浜市の地域活性のワークショップでアイスブレイクとして取り入れられていたもので、私たちはこれを多様な顔ぶれが集まる研修の自己紹介ワークとして、実施するようにしています。
やり方は簡単で、「私の興味・関心どころ」を単語で8つ書き出す、というものです。
ペンと紙さえあれば数分でできてしまうのですが、実際にやってみると、中には「う~ん」と頭を抱えこんでしまう人が出てきます。

それはなぜか?
「自分の興味・関心があるコトを8つも書き出せない」ことに気づくからです。

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社員研修ですから、仕事に関わること、例えば「部下育成」であったり「自社の業界の動向」といった言葉も多く出てきますが、仕事のことにこだわらず、今の自分を伝えるさまざまな単語を書いてもらうようにしています。

「ジョギング」や「少年サッカーのコーチ」といったスポーツのことを挙げる人。
「今読んでいる小説の名前」や「好きな作家」など読書の趣味について述べる人。
中には、「美術館好きが高じて自分でも絵を描くようになった」とか「プロ野球が好きで、さっきまで子供とチケット購入に並んでいました」など、具体的なエピソードを添えて説明してくださる方もいます。
しかし一方で、「どうしても4つしか書けませんでした」「昔だったらもっといっぱいあったのですが、今は家庭のことと職場のことしかないなあ」などと、少々暗い表情で発表する方も出てきます。

心理テストとも違いますし、数の多さを競うものではないので、仮に4つとか5つしか出なくても、気にする必要はないのです。

ただ、”今やっていること”だけではなく”関心をもっているトピックス”も含めて8つを書き出す訳ですので、「なぜ、直観的に自然と書き出すことができなかったのか」を少し立ち止まって考えてみるのも大事ですね、と伝えるようにしています。

このミニワークで書き出す8つのキーワードは、言ってみれば自分自身の今の断面図、つまり”切り口”を表すものです。

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真っ正面から見ればスマートでおとなしそうな人でも、実は柔道を長年やっていて、地域の道場で子供たちに教えるほどの腕前、などという切り口をもっている人もいるでしょう。
そのような切り口が示せば、他者にもその切り口が見えやすくなり、他者とつながりをつくるための”接点”の役割を果たしてくれます。
例えば先の”スマートでおとなしそうな人”であれば、その切り口がきっかけで、「会社のサークル活動で柔道部をつくるから、その指導役になってほしい」という打診があるかもしれません。

他者との接点となりうる”切り口”をどれだけ持っているか。
その切り口を増やし育む時期が、学生時代でもあるのではないかと思います。

かつてある研修で出会った社会人の方は、この自己紹介ワークをしながら、「子供の頃から映画や舞台を観るのが好きで、親の仕事の都合で転勤が続いたけれど、その行った先でまた演劇や書物に触れられるのがうれしかった」「学生時代は部活に明け暮れたけれど、その合間で本を読む時間をとても大切に感じていた」というエピソードを目を輝かせながら話してくれました。
その後その方は、”エンターテイメントの拠点づくり”のプロジェクトのリーダーとして、地域のコミュニティの基点としても社内外で高い評価を得て、今は企業の広報担当としてのキャリアへと進んでいます。
そして、慌ただしい仕事の傍らで、子どものころからの興味を活かして、書籍の執筆にも取り組んでいます。

私がこれまで研修等で出会った方の中で、主観ではありますが、このように「8つにはおさまらないくらいの多様な切り口をもち、”ワーク”と”ライフ”を重ね合わせてカタチにしながら生きている人」は、おそらく1~2割くらいです。
そして、6割くらいの人たちは、「”ワーク”と”ライフ”それぞれから考えていけば切り口が8つくらいにはなる人」。
残りの2割は、「切り口が限られる人」もしくは「多様な切り口をもつ、という発想になれない人」というところでしょうか。

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今の時代、SNS等を活用すれば、いかようにも他者とつながれる世の中になっています。
自分の中の多様な切り口をまわりに示していくことで、リアルなコミュニケーションとしても他者とつながりやすく(意思疎通しやすく)なりますし、それが”価値を生み出す特技”として他者と組み合わさることで、新たな生産活動(地域のスポーツチームで教える、だとか、美術の作品をWebで公開する、など)に取り組むことができるかもしれません。

消費する側ではなく、生産する(価値を生み出す)側になること。

そのための土台づくりが、実は子ども・学生時代に力を注いだことや関心を持っていたことの中に隠されているかもしれません。


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