なぜ日光街道を歩くのか?~修己治人の精神~
ごあいさつ 会長 矢萩大輔
2006年10月、私の古巣であった東証一部上場の会社が民事再生になりました。
いつも総武線秋葉原駅を通るたびに車窓から見えるそのビルは、私に、あるときは嘲笑を浴びせ、そしてあるときは奮起を与え続けていました。
そのビルも今はありません。
3年間という私のサラリーマン時代を振り返ってみると、意気揚々とゼネコン会社に入社した私は、将来、自分がつくった建物を地図に残す、ということを夢見ていました。
しかし、仕事といえば伝票整理と書類の分類が大半で、毎日朝9時に出社し、私の仕事は15時頃終わってしまう。
17時の終礼まであまりの退屈さに眠い目をこすりながら、2時間、睡魔との戦いです。
「これが大学を出た私のやることか?」
しかし、これらの仕事も将来大きな仕事をするための大切な知識を得るためなんだと自分自身に言い聞かせ、仕事を黙々とこなし続けていました。
だから、そのこと自体が仕事を辞める直接の原因になったのではありません。
それはある日突然やってきました。 毎日酒を飲むたびに「こんな仕事、誰でもできる」「会社なんてこんなもんよ」と言っては酒をあおっていた私の上司が、脳梗塞で倒れたのです。
私はその時、この会社を辞める決心をしました。 私は学生時代応援団をしていました。
常に120%の自分を出し切るかっこいい学生を目指していました。その気持ちは今も一緒です。
しかし、「かっこいい大人が、この会社にはいない」「将来を夢見て、楽しく仕事をしている大人が、この会社にはいない」―こう思った私は、1995年、オウムサリン事件、阪神淡路大震災と、日本が一番暗かったこの年に、周囲の反対を押し切り社会保険労務士としての一歩を踏み出す決意をしたのです。
それから10年余り、この「将来を夢見て、楽しく仕事をしているかっこいい大人を世界中に増やす」という命題を、社会保険労務士という業で日本のため、社会のために私に出来ることは何か。
それが、皆さんと日本ES開発協会会員を通してやっていこうと決意したきっかけです。
労働市場を担うこれからの子供たちや若者たちへ
さて、2000年になってから、日本に「ニート」「フリーター」という社会問題が浮上しました。
ニートの数は87万人、もしくはそれ以上とも言われ、以前の私のように今いる企業に将来を見出せずにただ日々を過ごしている社内ニートの数はその何倍もいます。
その一部は、メンタル不全に陥ったり、ひどい場合には自殺してしまうという社会現象まで起こしています。
さらに、「小人閑居して不善をなす」の言葉通り、街ではこうした若者の犯罪も社会問題になっています。
この原因の一端は、私たち大人に魅力がなくなったことも大きく影響しているのではないかと思うのです。
私は、小さい頃、早く父親みたいになりたいと思っていました。
「お父さん、出張で新幹線に乗ったんだよ!」「飛行機で外国まで行ったんだ」と、無邪気な顔をして、いきいきと働いていた父を誇らしげに思って、周りに言い回っていたのを思い出します。
しかし、こうした「仕事自体に気概をもつ」という社会は崩れつつあります。
ライブドア事件や、今の食品業界等を中心に起きている偽装問題等、“社会をだましてでも、お金さえ稼げればいい”とも言えるこの現象は、子供や若者達の、働くことを通して「人の役に立つ」という人間性の根源を失いつつあるとも言えます。
私たち日本ES開発協会のメンバー一人ひとりが出来ることは何でしょうか?
私たちは、会社や各経営団体トップの方々に、私たちのおもいである「将来を夢見て仕事をしている、かっこいい大人を世界中に増やす」という活動を理解していただくよう、私たちが率先して取り組んでいくべきではないかと思います。
そのためには「修己治人」の考え方が必要です。
つまり、まずは、私たちJES会員一人一人からはじめなくてはなりません。自分の仕事に誇りを持ち、毎日「仕事を楽しみ、経営を楽しむ」というところからはじめなくてはいけません。
日本ES開発協会の取り組みが社会に希望を与えるようになるには
私たち日本ES開発協会は、ESを推進する企業や団体のトップの方々に、ESの根本的思想である“人間性尊重経営”の素晴らしさを伝え、そして会社自体が、自律的にES活動を推進していくことをサポートしていくために存在します。
具体的には、JES会員がより多くの企業や団体へ関与する事により、関与した会社・団体が組織の誇りを取り戻し、ESの心を基軸とした組織、そして、商品・サービスに誇りを持つ状態を作り出すのです。
その結果、社長が経営を楽しみ、社員は楽しく仕事をする、そんな社会の実現を目指せればと思っております。
私たち日本ES開発協会は、380名というPalmグループの中から、特に人事とESの活動を積極的に行おうと、日々努力、研鑽している方々、そして、自社でESの素晴らしさを実際体感し、そして、さらに他にもこの素晴らしさを広めていこうとするメンバー会社のトップの方々の集まりです。
今まで私達は「ESクレド」「人財士」「社員手帳」や「ES向上型人事制度」等の数多くの技術を世に出してまいりました。
これから私達は、これらの技術に更に磨きをかけ、会員の拡大とともに、セミナーや会報誌でトップに直接伝えていくとともに、他のNPOや経済団体との協調関係をとりながら社会にESの考えを広めていきます。
関与した企業のトップ、業界団体の先には就職難民の方々や、その予備軍の多くの方がいることを忘れてはいけません。
先日、ある大学の就職セミナーでのこと、ある1人の女の子が、私にある質問をしてきました。
「先生、大人って楽しいですか?」
「仕事ってつらくないですか?」
「社会に出るのが怖くないですか?」
さて、JES会員の皆さんは何と答えますか?
これは、この女の子1人の質問ではないのです。
多くの学生たちが今、私たち大人をみて、このように思っていることを忘れてはいけません。
ニート予備軍が、こんなにもたくさんいるのです。
私達は、ESクレドをつくるにあたり、多くの方に、たくさんの成功体験記をつづってもらいました。
そこには「仕事を通しての人生のドラマ」があるのです。 この成功体験発表会の中で、ある社長が、「社員一人一人には仕事を通しての人生のドラマがある。
そして私達はそのトップとして、彼らのドラマをハッピーにする責任があるのだと感じることができた社員に感謝したい」とおっしゃっていました。
このESの活動を通して、大なり小なり、気づくこと。
それは仕事への感謝、社員への感謝です。
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